能楽の楽器(私たちは道具と言います)には、笛(ふえ)・小鼓(こつづみ)・大鼓(おおつづみ)・太鼓(たいこ)の4種類が用いられます。
ただし、太鼓を持ちいない曲もあります。これを大鼓・小鼓を意味する大小で「大小物」といい、太鼓を使用する曲を「太鼓物」といって区別しています。
各楽器の演奏者は完全に専門職で、舞台では一生その専門の楽器しか勤めません。それぞれに流儀があり、楽譜や演奏法に特色がありますが、お互いに全ての流儀に対応しており、様々な組み合わせが楽しめるようになっています。
※能管とも言います
能楽の楽器で唯一の旋律楽器で、材質は油質・水分が抜けた煤竹を用いています。
吹き口と指穴の間にノドといわれる挿入管があります。
これにより音階は不安定となっていますが、能独特の音色や力強い演奏が可能となっています。
舞はもとより謡中に吹くアシライにも、その情景心情表現に欠かせない役目をおっております。
皮は馬皮、中央がくびれた形に造られた胴は桜の木を用いて、調べ緒といわれる麻の紐で組み上げ演奏します。
皮は適度な湿度を好み、乾燥を嫌います。左手で持ち、右肩に載せ、右手で打ちます。
その際、左手の握り具合を変える事により様々な音色を出す事ができます。
材質は小鼓と同じです。比較的緩く締められている小鼓に対して大鼓は極限まで締め上げられています。
皮も湿度を嫌い、炭火で二時間程焙じることにより突き抜けるような甲高い音色の演奏が可能となっています。強い男性的な大鼓が位を保ち、柔らかく小鼓がさらに色付けをする、夫婦のような関係性がその演奏形式にみてとれます。
皮の材質は牛皮、皮の中央には撥皮といわれる鹿皮が貼り付けられています。
胴は小鼓・大鼓と違い中央にくびれはなく、けやき・栴檀(せんだん)を用いています。
専用の台に掛けて床に据え、二本の撥で演奏します。
太鼓は大概一曲の後半部分、いよいよ正体を明かし天仙怪物の類が登場する場面に多く演奏いたします。